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2026.10.27

高齢者の推し活にはどんな効果がある?メリットや介護施設での取り組み事例を紹介

好きな歌手の歌を聴いたり、スポーツチームを応援したり、テレビでお気に入りの俳優を見たり。
こうした「推し活」は、若い世代だけでなく高齢者の間でも今広がっています。

その中でも特に注目したいのが、介護施設での推し活です。
日々の生活に楽しみが増えるだけでなく、ほかの利用者との会話が増えたり、活動への意欲が高まったりするきっかけになると考えられています。
では、高齢者の推し活には具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。

この記事では、高齢者が推し活をするメリットや心身への影響をご紹介します。
また、自宅や介護現場で無理なく楽しむ方法についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

高齢者にも広がる「推し活」とは?

推し活とは、好きな人物や作品、スポーツチームなどを応援して楽しむ活動のことです。
「推し」という言葉からアイドルの応援をイメージするかもしれませんが、対象や楽しみ方に決まりはありません。大切なのは、本人が興味を持ち、自分から関わりたいと思えることです。

推し活は若者だけのものではない

高齢者にとっても、好きなものを応援すること自体は珍しくありません。
例えば、昔から応援している野球チームの試合結果を毎日確認したり、好きな演歌歌手のテレビ出演を楽しみにしたりすることも、推し活の一つと言えます。
以前から親しまれてきた趣味や応援活動が、現在では「推し活」という言葉で捉えられるようになっているのです。

また、年齢を重ねて外出の機会が少なくなっても、テレビやラジオ、インターネットなどを通じて推し活を楽しむことができます。身体状況に合わせて活動方法を選べる点も、高齢者にとって取り入れやすい理由の一つでしょう。

高齢者はどんなものを推している?

高齢者の推し活には、さまざまな楽しみ方があります。

推し活の対象 具体的な楽しみ方
歌手・アイドル 音楽鑑賞、テレビ出演の視聴、コンサートへの参加
俳優・タレント ドラマや映画の鑑賞、出演情報のチェック
スポーツ選手・チーム テレビ観戦、試合結果の確認、応援グッズの制作
動物・キャラクター 写真や動画の鑑賞、グッズ収集
地域の著名人・団体 地元イベントへの参加、活動の応援

ここで覚えておきたいのは、必ずしも新しい趣味を見つける必要はないということです。
昔好きだった歌手の曲を久しぶりに聴いたり、若い頃に夢中になったスポーツをもう一度観戦したりすることも、推し活を始めるきっかけになります。本人がこれまで大切にしてきた趣味や経験を振り返ることが、その人に合った楽しみを見つける第一歩になるでしょう。

高齢者が推し活をすることで期待できる5つの効果

推し活の魅力は、好きなものを楽しむ時間だけにとどまりません。
誰かを応援することが日常生活のさまざまな行動につながり、高齢者の生きがいや社会的な交流にも関係すると考えられています。ここでは、期待できる効果を5つに分けて紹介します。

1. 生活に楽しみや生きがいが生まれる

高齢者の推し活で特に注目されているのが、生きがいとの関係です。
例えば、好きな歌手のテレビ出演が決まると放送日が楽しみになります。
スポーツチームを応援している人なら、次の試合に向けて応援の準備をすることもあるでしょう。
このように楽しみにしている予定があることで、日常生活に目標や張り合いが生まれる可能性があります。

実際に、サントリーウエルネス、京都大学、大阪公立大学による2026年の共同研究では、高齢者施設でのサッカー応援活動への参加頻度が、会話や身だしなみへの関心などを通じて生きがいと関連していることが報告されました。

ただし、推し活をすれば必ず生きがいが高まると証明されたわけではありません。
本人が無理なく楽しめることが大前提です。

2. 外出や身体を動かすきっかけになる

推し活は、身体を動かす動機になることもあります。
好きなアーティストのコンサートに参加するために外出したり、スポーツの試合を観に行くために移動したりすることが、その一例です。

外出が難しい場合でも、応援グッズを作る、音楽に合わせて手拍子をする、好きな曲に合わせて身体を動かすなど、室内でできる活動はあります。特に介護施設では、単に運動を促すだけでなく、本人の好きな桃を活動のきっかけにする方法も考えられます。例えば、好きな歌手の曲を使った体操であれば、普段の体操とは違った気持ちで参加できる人もいるかもしれません。

もちろん、推し活辞退が運動機能を改善するわけではありません。
体力や健康状態に合わせて無理のない範囲で身体を動かすことが大切です。

3. 人との交流や会話が増える

共通の話題があると、人との会話は生まれやすくなります。
同じスポーツチームを応援していれば、試合結果について話したり、好きな選手の活躍を喜び合ったりすることができます。違うチームを応援していても、それぞれの意見を交わす楽しみがあるでしょう。
推し活は、こうしたコミュニケーションのきっかけになります。

先ほど紹介した2026年の共同研究では、サッカー応援活動の実施日に、高齢者が施設の共用スペースで過ごす時間が、通常のレクリエーション実施日よりも長かったことが確認されています。研究チームは、共通の応援対象を持つことで周囲とのつながりが生まれた可能性を指摘しています。

また、推し活は家族との会話にも取り入れられます。
「最近、あの歌手はテレビに出ている?」「昨日の試合はどうだった?」といった何気ない質問が、本人の好きなことを知る機会になるでしょう。

4. 気分転換やストレス解消につながる

好きな音楽を聴いたり、応援している選手の活躍を見たりする時間は、日常の気分転換になることがあります。介護を受ける生活では、身体の状態や施設の予定によって、本人の希望通りに行動できない場面もあるでしょう。そのような中でも、自分の好きなものを選び、楽しむ時間を持つことには意味があります。

例えば、朝食後に好きな歌手の曲を聴く、午後にお気に入りのドラマを見るなど、短い時間でも楽しみを取り入れることは可能です。ただし、推し活によるストレス軽減の程度には個人差があります。推しの活動休止や試合の敗戦などで落ち込む場合もあるため、本人の反応を見ながら楽しめる環境を整えるようにしましょう。

5. 脳への刺激や認知機能との関係が期待される

推し活では、さまざまな情報に触れる機会があります。
例えば、試合の日程を確認する、好きな歌手の新曲を覚える、応援グッズを制作するといった活動では、記憶や注意、判断などに関わる働きが使われます。こうした活動を楽しみながら続けることは、知的な刺激を得る機会になるでしょう。

一方で、推し活によって認知症を予防できる、認知機能が改善するといった医学的な効果が確立しているわけではありません。認知症のある人の場合でも、活動への参加や記憶することを無理に求めるのではなく、音楽を聴いて楽しむ、好きな選手の写真を眺めるなど、本人が心地よく過ごせる方法を選ぶことが大切です。

高齢者が無理なく推し活を楽しむ方法

推し活を始めるために、高価なグッズを購入したり、遠くのイベントに出かけたりする必要はありません。
日常生活の中に好きなものと関わる時間を少しずつ取り入れるだけでも十分です。
高齢者の場合は、体力や生活環境に合った方法を選ぶことが、無理なく楽しみを続けるポイントになります。

テレビや動画で好きな人を応援する

最も手軽なのは、テレビや動画を通じた推し活です。
音楽番組やスポーツ中継、ドラマなど、普段利用しているテレビでもさまざまなコンテンツを楽しむことができます。インターネットを使える場合は、公式YouTubeチャンネルなどを利用して、好きな歌手の過去の映像やスポーツ選手のインタビューを見ることも可能です。

ここで工夫したいのが、ただ映像を流すだけで終わらせないことです。
例えば、昔好きだった歌手の映像を見ながら「この曲が流行っていた頃は何をしていましたか?」と話しかければ、冬至の思い出を聞くきっかけになります。
本人の好きなものを通して、これまで知らなかった経験や思い出に触れられるかもしれません。

家族や友人と一緒に楽しむ

推し活は一人でももちろん楽しめますが、誰かと共有することで交流の機会を広げることもできます。
例えば、離れて暮らす家族が好きな歌手の出演情報を伝えたり、孫と一緒にスポーツ観戦をしたりする方法があります。

共通の推しがいなくても問題ありません。
「最近はどんな歌手が人気なの?」「昔はこの俳優が好きだった」といった会話から、お互いの趣味を知ることもできるでしょう。介護施設でも、利用者の好きなものを職員が把握しておくことで、日常の会話に取り入れやすくなります。

ただし、好きなものについて話したくない人もいます。
話題にする際は本人の反応を見ながら、無理に会話を広げないようにしましょう。

体力や予算に合わせて活動する

推し活を長く楽しむためには、体力面と金銭面への配慮も欠かせません。
コンサートやスポーツ観戦に出かける際には、移動距離や会場の設備、休憩場所などを事前に確認するようにしましょう。自宅で楽しむ場合も、長時間同じ姿勢で過ごさないよう注意が必要です。

また、グッズ購入や有料配信など、費用が発生する活動では、本人の希望と予算を確認することが大切になります。特にインターネット上では、公式サイトを装った販売ページや不審な広告などにも注意しなければなりません。
本人の楽しみを尊重しながら、必用に応じて家族や職員が安全面をサポートするとよいでしょう。

介護施設で推し活を取り入れる際のポイント

介護施設で推し活を行う場合、イベントを開催すること自体が目的にならないようにすることが必要です。
重要なのは、利用者が自分の好きなものに触れ、本人なりの楽しみ方を見つけられることです。

本人の好みや意思を尊重する

推し活を取り入れる際は、まず本人の興味や好みを知ることから始めましょう。
直接聞くだけでなく、日ごろの会話や家族からの情報、これまでの生活歴なども参考になります。

例えば、若い頃に野球をしていた人なら、地元球団の試合に関心を持つかもしれません。
一方で、スポーツ経験がなくても、応援すること自体を楽しめる人もいます。
大切なのは、職員が推しを決めるのではなく、本人が何を好きなのか、何を楽しみたいのかを中心に考えることです。

また、最初は興味を示さなかった人が、ほかの利用者の応援する姿を見て関心を持つ可能性もあります。
最初から参加を決めてもらうのではなく、気軽に見学できる環境を用意する方法もよいでしょう。

身体状況に合わせた参加方法を考える

推し活は、全員が同じ方法で参加する必要はありません。
例えば、スポーツ観戦のイベントを開催する場合でも、声を出して応援する人、手拍子をする人、静かに試合を観る人など、それぞれの参加方法が考えられます。視力や聴力が低下している人には、画面の大きさや音量、座る位置などを調整することも必要です。

また、認知症のある人に対しては、ルールや選手の名前を覚えることよりも、その場の雰囲気を楽しめるかどうかを大切にしましょう。活動中に疲れが見られた場合は、途中で休憩したり、別の場所で過ごしたりできるようにしておくと安心です。

参加を強制せず、楽しめる環境を整える

推し活に限らず、介護施設のレクリエーションでは、本人の意思を尊重することが基本です。
ほかの利用者が盛り上がっていても、皆が同じように楽しめるとは限りません。
人が集まる場所が苦手な人や、静かな環境で好きな音楽を聴きたい人もいるでしょう。

そのため、施設全体で応援イベントを開催する場合でも、参加しない選択肢を用意しておくことが大切です。
また、推し活を定期的に実施するなら、参加人数だけでなく、次のような点にも目を向けてみましょう。

  • 活動中に本人が楽しそうに過ごしているか
  • 次回の活動を楽しみにする言葉があるか
  • 職員やほかの利用者との会話が生まれているか
  • 活動後に疲れや負担が残っていないか

必ずしも目立った変化が必要なわけではありません。
静かに映像を眺めている時間も、本人にとって大切な楽しみになっている可能性があります。

推し活を一度きりのイベントで終わらせない工夫も大切

介護施設で推し活を取り入れる際に、もう一つ考えておきたいのが継続性です。

例えば、月に1回だけスポーツ観戦イベントを行うのではなく、普段からチームの試合結果を掲示したり、利用者が応援メッセージを×場所を設けたりする方法があります。音楽が好きな人なら、次のコンサートに向けてリクエスト曲を考える時間を作ってもよいでしょう。
こうした取り組みによって、イベント当日だけでなく、その前後にも楽しみが広がります。

ただし、活動を続けるために職員の負担が大きくなりすぎては本末転倒です。
既存のレクリエーションや日常会話と組み合わせながら、施設の状況に合った運用を考えることが重要です。

高齢者の推し活は日々の楽しみや生きがいにつながる

高齢者の推し活は、好きな歌手や俳優、スポーツチームなどを応援する活動です。
自宅でテレビを見たり、介護施設で仲間と応援したりと、楽しみ方はさまざまです。
推し活を通じて生活に張り合いが生まれたり、人との会話が増えたりする可能性もあり、介護現場での取り組みに関する研究も進められています。

なかでも注目したいのは、介護を受けている高齢者も、誰かを応援する存在になれるという点です。
介護では、日常生活の困りごとを支えることについ目が向きがちですが、本人が何を好きで、どのような時間を楽しみにしているかを知ることも大切ではないでしょうか。

推し活を特別な活動として考える必要はありません。
好きな音楽を聴く、試合結果を確認する、家族と一緒にドラマを見るといった身近なことから始めることができます。
本人の意思や身体状況を尊重しながら、一人ひとりに合った楽しみ方を見つけていきましょう。