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2026.09.24

老人ホームに入ったら介護サービスは選べない?『囲い込み』問題を調べてみた

親の老人ホームを探していると「ケアマネジャーも訪問介護もこちらで手配できます」と説明されることがあります。いくつもの事業所を自分で探さなくて済むので、家族にとってはありがたい話に聞こえます。

ただ、住宅型有料老人ホームでは、本来入居者が必要な介護サービスを選び、地域の事業所と契約することが基本です、それなのに特定の事業所しか使えなかったり、ケアマネジャーの変更を求められたりするケースが「囲い込み」として問題になっています。

2026年には、この老人ホームの囲い込みへの対策を含む法改正も行われました。老人ホームの囲い込みとは何なのか、なぜ問題なのか、入居する側はどこを確認すればよいのかを整理します。

老人ホームの「囲い込み」とは?

老人ホームの囲い込みとは、主に住宅型有料老人ホームなどで入居者が利用する介護サービスを特定の事業者へ限定したり、事実上そこを選ぶよう誘導したりすることを指します。

例えば、老人ホームと同じ会社やグループ会社が訪問介護事業所や居宅介護支援事業所を運営しているケースがあります。その事業所を利用すること自体に問題があるわけではありません。

大切なのは、入居者に選択肢があるかどうかです。

「おちらの訪問介護を使うと便利ですよ」と案内され、自分で納得して選ぶのと「入居するならこの事業所を利用してください」と条件を付けられるのでは意味が違います。

厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針でも、入居者の介護サービスを特定の事業者に限定・誘導しないこと、入居者が希望する介護サービスの利用を妨げないことが示されています。

特に知っておきたい「住宅型」と「介護付き」の違い

囲い込みの話を理解するうえで、まず確認しておきたいのが老人ホームの種類です。

介護付き有料老人ホーム

  • 介護サービス:ホームが包括的に提供するのが基本
  • ケアプラン:ホーム側で作成
  • サービス事業者:仕組み上、ホーム側が提供・手配

住宅型有料老人ホーム

  • 介護サービス:外部の介護事業所を利用
  • ケアプラン:外部のケアマネジャーなどに相談
  • サービス事業者:入居者が選択できるのが基本

介護付き有料老人ホームでは、ホームが介護サービスを提供する仕組みになっています。その一方で住宅型有料老人ホームでは、住まいの契約とは別に、入居者が訪問介護などの介護サービスを選んで利用するのが基本です。

つまり、介護付き有料老人ホームでホームの職員から介護を受けることと、住宅型有料老人ホームで外部サービスの選択肢が事実上なくなることは別の話です。

「全部同じ会社だから安心」が問題なのではない

囲い込みという言葉だけを見ると「同じグループの訪問介護やケアマネを利用している老人ホームは避けたほうがいいのでは」と思うかもしれません。しかし、そこまで単純な話ではありません。

ホームと訪問介護、訪問看護などが連携していれば、情報共有がしやすいなど、一体的にサービスを提供するメリットも考えられます。入居者自身が説明を受け、その仕組みに納得したうえで選んでいるのであれば、系列の事業所を利用しているという理由だけで囲い込みとは言えません。

見るべきなのは「同じ会社か」ではなく「ほかを選べるか」です。

例えば、入居前から付き合いのあるケアマネジャーを続けたいと申し出たときに変更を求められる、外部の訪問介護を希望しても選べない、特定の事業者を使うことが入居条件になっている、といったケースです。

厚生労働省の検討でも、資本・提携関係のある介護事業所やケアマネ事業所の利用を入居条件にしたり、利用する場合だけ家賃を優遇したり、かかりつけ医やケアマネジャーの変更を求めたりすることが課題として取り上げられてきました。

なぜ老人ホームの「囲い込み」が問題になっている?

背景には、住宅型有料老人ホームが高齢者の住まいとして大きな役割を担うようになっていることがあります。

厚生労働省が2026年に示した資料では、有料老人ホームは約2万5,000棟、定員は約95万人。そのうち住宅型は約2万棟、定員約63万人とされています。
この数字には、有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅も含まれます。

住宅型有料老人ホームでは、ホームの利用料と介護保険サービスの契約が分かれています。入居者が訪問介護や訪問看護などを利用すれば、それぞれの介護事業所からサービスを受ける仕組みです。

問題になるのは、入居者の状態や希望よりも事業者側の事情が優先されてしまう場合です。

厚生労働省も併設・隣接する介護サービス事業所などの利用への限定や誘導によって、入居者による主体的な介護サービスの選択が制約され、過剰な介護サービスが提供される事例を「いわゆる囲い込み」として課題に挙げています。

ここで注意したいのは「介護サービスをたくさん利用している=囲い込み」ではないことです。

要介護度が高く、日常生活で多くの支援が必要な人もいます。その場合、訪問介護や訪問看護の利用回数が多くなるのは不自然ではありません。

本来は「この人が生活するために何が必要なのか」が先にあり、その結果としてサービスの種類や回数が決まります。最初から利用する事業所やサービス料が決まっているような状態になっていないかを見ることが大切です。

2026年の法改正で「囲い込み」対策が強化へ

こうした状況を受け、2026年6月に成立・公布された社会福祉法等の改正では、有料老人ホーム制度の見直しが盛り込まれました。大きな変更の一つが、一定の有料老人ホームを対象とした登録制の導入です。

登録対象となる住宅型有料老人ホームについては、特定の介護サービス事業者を利用することをホームへの入居条件とすることの禁止や、ケアマネジメントの独立性を確保するための方針の策定・公表などが盛り込まれています。

さらに、対象となる住宅型ホームの入居者に対してケアプラン作成と地域生活の相談を包括的に行う「登録施設介護(予防)支援」という新たな相談支援の仕組みも設けられる方向です。

ただし、制度の細やかな運用まですべてがすでに始まっているわけではありません。2026年9月時点でも登録制の施行に向けた検討は続いており、厚生労働省では9月18日の検討会でも「登録制の施行に向けた対応」が議題となっています。
老人ホームの囲い込みは単なる業界内の問題ではなく、国が制度そのものを見直す段階まで進んでいるテーマなのです。

老人ホーム見学で聞いておきたい5つの質問

では、家族が住宅型有料老人ホームを探すときに何を確認すればよいのでしょうか。制度の細かな用語を覚えるより、見学時に次のような質問をしてみると、そのホームの考え方が見えやすくなります。

  • 「今利用しているケアマネジャーをそのままお願いできますか?」
  • 「経歴以外の訪問介護や訪問看護も選べますか?」
  • 「紹介された介護事業所を利用しない場合、家賃や入居条件は変わりますか?」
  • 「ケアプランは誰か、どのタイミングで作りますか?」
  • 「この介護サービスが必要な理由を本人や家族にも説明してもらえますか?」

特に確認したいのは、質問に対して「できます」「できません」だけで終わらず、理由まで説明してくれるかどうかです。系列の事業所を勧められたとしても「連携しやすいのでご案内していますが、ほかの事業所も選べます」と説明されるのであれば、入居者側にも選択肢があります。

一方で「皆さんこの事業所を使っています」「外部のケアマネジャーは利用できません」と言われた場合は、なぜ選べないのかを確認してから契約を検討したほうがよいでしょう。

老人ホーム選びでは「何をしてくれるか」だけでなく「何を選べるか」を確認しよう

老人ホームを探すときは食事、居室の広さ、料金、スタッフの人数などに目が向きます。しかし住宅型有料老人ホームでは、入居後に利用する介護サービスを自分で選べるかどうかも重要な確認項目です。

老人ホームの囲い込みとは、単に系列の介護事業所を利用することではありません。本来あるはずの選択肢が狭められ、本人に必要なサービスよりも特定事業者の利用が優先されることが問題です。「介護は全部こちらで手配します」という言葉は、家族にとって心強いものでもあります。だからこそ、その次に「ほかの事業所を希望した場合も選べますか?」と聞いてみることが大切です。

老人ホーム選びではサービスの充実度だけでなく、入居した後も本人の医師が尊重される仕組みになっているかまで確認しておきたいところです。