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2026.10.06

親の介護で仕事を辞める前に|介護離職を防ぐ制度と両立のポイント

突然の入院や転倒をきっかけに介護が始まると、病院への付き添いや介護サービスの手続き、実家との行き来などが一気に増えることがあります。そうなることで、仕事との両立が難しくなり「いったん退職して落ち着いてから考えよう」と思うのも無理はありません。

しかし、親の介護が始まったからといってすぐに仕事を辞める必要があるとは限りません。介護休業や介護休暇のほか、地域の介護サービスを利用することで、働きながら介護を続けられる可能性があります。

実際、仕事をしながら家族の介護を担う人は「ビジネスケアラー」と呼ばれ、その増加が社会的な課題になっています。経済産業省は、2030年にはビジネスケアラーが約318万人に達すると推計しています。

この記事では、親の介護と仕事の両立に悩んでいる方に向けて、仕事を辞める前に確認しておきたい制度や相談先、介護を抱え込みすぎないためのポイントを解説します。

親の介護を理由に仕事を辞める人は少なくない

親の介護と仕事を両立できずに退職することを「介護離職」といいます。総務省の2022年就業構造基本調査によると、介護・看護を理由に過去1年間に前職を離職した人は約10万6,000人でした。2017年の約9万9,000人から増加しています。

介護離職が起こりやすい理由の一つは、介護がいつまで続くのか予測しにくいことです。育児であれば、子供の成長に伴って生活の変化をある程度見通せます。その一方で介護は親の身体状況によって必要な支援が変わります。「数週間だけ」と思っていた付き添いが、その後も続くこともあるでしょう。

さらに「親のことだから自分がやらなければ」「会社に迷惑をかけたくない」「介護サービスを使うほどではない」と考え、自分だけで対応しようとすると、仕事との両立が難しくなりやすくなります。だからこそ、退職を決める前に「自分が介護する方法」ではなく「介護を続けられる体制をどうつくるか」を考えることが大切です。

親の介護で仕事を辞める前にまずやること

介護が始まった直後は、これから何年続くのか、どの程度の介助が必要なのかもわからない状態です。
この段階で退職という大きな決断をするのではなく、まず状況を整理しましょう。

親に必要な介護を把握する

最初に確認したいのが、親が「何に困っているのか」です。

食事や入浴、排せつ、買い物、通院、掃除など必要な支援は人によって異なります。
すべてを家族が担当する必要はありません。訪問介護やデイサービスなどで補える部分もあります。

まだ要介護認定を受けていない場合は、市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターに相談してみましょう。
地域包括支援センターは、高齢者の生活や介護に関する相談を受け付けている地域の相談窓口です。「何から始めればいいのか分からない」という段階でも相談できます。

会社に介護していることを伝える

親の介護について職場に言い出しにくい方もいるかもしれません。
しかし、介護をしていることを会社が知らなければ、勤務時間の調整や休業制度などについて相談することも難しくなります。

まずは上司や人事担当者に「親の介護が必要になった」「通院の付き添いが発生する可能性がある」「仕事はできるだけ続けたい」といった状況を伝えてみましょう。

2025年4月からは改正育児・介護休業法が施行され、企業には、介護に直面した従業員への両立支援制度の個別周知・意向確認や、制度を利用しやすくするための雇用環境整備などが義務付けられています。「会社に相談しても仕方がない」と決めつけず、まず利用できる制度を確認することが重要です。

親の介護と仕事を両立するために使える制度

仕事を続けながら親を介護する人には、育児・介護休業法によるさまざまな制度があります。
それぞれ目的が異なるため、状況に応じて使い分けましょう。

介護休業

介護休業は、対象となる家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できる制度です。
ここで注意したいのは、93日間ずっと自分で親を介護するためだけの制度ではないという点です。

例えば、以下のようなことにも活用できます。

  • 要介護認定を申請する
  • ケアマネジャーと相談する
  • 介護施設やサービスを探す
  • 家族で役割を話し合う
  • 今後の介護体制を整える

つまり、介護休業は「仕事を休んで介護を背負う期間」ではなく、仕事に戻るための介護体制をつくる期間として考えることがポイントです。雇用保険の一定の条件を満たしている場合には、介護休業中に休業開始時賃金日額の67%相当の介護休業給付を受けられる場合があります。

介護休暇

介護休暇は、通院への付き添いや介護サービスの手続きなど、比較的短時間の対応が必要なときに使いやすい制度です。

対象家族が1人なら年間5日、2人以上なら年間10日まで取得でき、1日だけでなく時間単位でも利用できます。
「午前中だけ病院へ連れて行き、午後から出勤する」といった使い方もできるため、急な退職を避けながら仕事を続ける助けになります。

残業免除や短時間勤務なども確認する

親の介護と仕事を両立する方法は、休業や休暇だけではありません。
育児・介護休業法には、所定外労働の制限(残業免除)、時間外労働・深夜業の制限のほか、短時間勤務やフレックスタイム、時差出勤などに関する仕組みがあります。

また、2025年4月からは介護をしている労働者がテレワークを選択できるよう措置を講じることも、企業の努力義務となりました。会社独自の介護支援制度を設けているケースもあるため、就業規則も確認しておきましょう。

「自分が介護する」から「介護を組み立てる」へ

親の介護と仕事を両立するときに大切なのは、介護のすべてを自分で行おうとしないことです。

家族だけで入浴や食事、見守り、通院、買い物まで対応すれば、仕事に使える時間がなくなってしまいます。
介護保険サービスには、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具の貸与などがあります。

例えば、平日の昼間はデイサービスを利用する→帰宅後の食事は配食サービスを利用する→入浴は訪問介護などを利用する→通院の日だけ介護休暇を取得する、というように、サービスと家族の支援、会社の制度を組み合わせて考えることができます。

「介護をする人=なんでも自分で世話をする人」ではありません。必要な支援を整理し、ケアマネジャーや介護サービス、家族、職場につなげていくことも重要な介護の役割です。

ビジネスケアラーが増える今、介護は一人で抱える問題ではない

仕事をしながら家族を介護するビジネスケアらーは、決して珍しい存在ではなくなっています。

経済産業省は、2030年には約318万人がビジネスケアラーとなり、介護による生産性低下や離職などによる経済損失は約9兆円に上ると試算しています。そのため、介護と仕事の両立は「従業員が家庭内で解決する問題」から、企業や社会全体で支える問題へと変わりつつあります。

親の介護が始まったときに会社へ相談することは、特別なお願いすることではありません。
仕事を続けたいのであれば、介護が限界になる前の段階で相談することが大切です。

親の介護で仕事を辞めるかどうかは制度を確認してから考える

親の介護が始まると、仕事との両立に不安を感じて「辞めたほうが楽になるのでは」と考えることもあるでしょう。しかし、退職すると収入が減るだけでなく、再就職が必要になったり、自分自身の老後資金に影響したりする可能性があります。
その一方で、介護が始まった直後は今後どのくらいの支援が必要になるのか分からないことも少なくありません。

そのため、退職という結論を急ぐ前に下記を一つずつ確認してみましょう。

  • 親にはどのような支援が必要なのか
  • 利用できる介護サービスはあるか
  • 介護休業や介護休暇を使えるか
  • 勤務時間を調整できないか
  • 家族で役割を分担できないか

親の介護と仕事を両立するポイントは、自分ひとりで頑張り続けることではありません。「自分が全部介護するにはどうすればいいか」ではなく「自分が仕事を続けながら親を支えるには、どんな仕組みが必要か」を考えること。

介護離職を防ぐ第一歩は、仕事を辞める決断をすることではなく、使える制度やサービスについて知り、周囲に相談することからです。