物忘れが頻繁に起きると「アルツハイマーかもしれない」と不安になる方もいると思いますが、“アルツハイマー型認知症による記憶喪失”と“高齢化による単純な物忘れ”は全く異なる症状なのです。
このアルツハイマー型認知症は、早めの診断や予防策をとることで症状を軽減させることができるものなので早めに理解しておきたいところです。
そのためこの記事では、アルツハイマー型認知症と単純な物忘れの違い、アルツハイマー型認知症の初期症状についてご紹介します。
もくじ
アルツハイマー型認知症とは?|進行性の脳の病気
アルツハイマー型認知症とは、進行性の脳の病気です。
主に高齢化とともに発症するもので、認知症の1種として症状が現れます。
しかも、認知症の約6割はアルツハイマーともいわれているほどで、認知症の代表的な症状です。
症状の進行具合は人によって違い、年齢とともに少しずつ進行していきます。
以前は、「アルツハイマー病」と「アルツハイマー型認知症」は全くの別物だといわれていました。
しかしどちらの症状も似ていることから、現在では同一の病気として示されるのがほとんどです。
アルツハイマー型認知症と単純な物忘れの違い
短期記憶障害と単純な物忘れの症状は似ているので、アルツハイマー型認知症とよく勘違いされる方が多いですが、この2つは全く異なる病気です。
アルツハイマー型認知症は単純な物忘れとは違い、部分的な記憶ではなくその物事自体を忘れてしまう症状になります。
例えば、「明日の15時にランチをする」という約束をしたとしましょう。単純な物忘れでは「明日の何時にランチをするんだっけ?」などと、部分的に記憶を忘れてしまいます。
しかし、アルツハイマー型認知症では「約束なんてしたっけ?」というように、ランチをする記憶そのものが失われてしまうのです。
そのため、高齢化による単純な物忘れとアルツハイマー型認知症の症状は似ていますが、全く異なる病気になります。
アルツハイマー型認知症の具体的な症状|初期症状
アルツハイマー型認知症は大きく分けて2つの症状が見られます。
はじめに見られるのが、物忘れや思考能力の低下を引き起こす中核症状。
続いて、徘徊や妄想などにつながる周辺症状の2つになります。
- 中核症状
- 周辺症状
中核症状
アルツハイマー型認知症の初期症状といわれるのが「中核症状」です。
中核症状では、頻繁に物忘れをしてしまう短期記憶障害が見られます。この記憶障害では、一部分の記憶だけでなく記憶そのものを喪失してしまうのです。
また、忘れてしまった事実を本人が認識していないケースも多く見られます。
ほかにも時間や場所の認識が難しくなる見当識障害や、料理や洗濯のやり方を忘れてしまう実行機能障害などもあります。
- 記憶障害
- 見当識障害
- 理解・判断力の障害
- 実行機能障害
- 失語
周辺症状
周辺症状は、中核症状に何かしらの二次的要因が加わるために引き起こるといわれています。何かしらの二次的要因とは、ご家族の影響やストレスによるものです。
周辺症状では、うつ病や徘徊・妄想・人格変化など、中核症状とは違って行動に現れます。
また、周りの人に暴言や暴力を行ってしまい、トラブルを引き起こすケースも後を絶ちません。
- うつ病
- 徘徊
- 妄想
- 人格変化
- 暴言・暴力
- 不安
- 焦燥
アルツハイマー型認知症の原因|悪質なタンパク質
アルツハイマー型認知症は、βアミロイドやタウタンパクと呼ばれる「悪質なタンパク質」が蓄積し、脳神経を破壊・萎縮することが主な原因といわれています。
また、脳神経のつながりや伝達がうまく行っていないために引き起こるケースもあるようです。
しかし、悪質なタンパク質の蓄積に関する研究を長年していますが、いまだ判明されていません。
参照:アルツハイマー病|KOMPAS
いずれも高齢化による発症がほとんどで、脳の変化と萎縮により徐々に症状が悪化していきます。
とはいえ40〜50代で発症するケースも中にはあり、その場合は遺伝性があるといわれています。
アルツハイマー型認知症の治療法
これだけアルツハイマー病や認知症が発症している現在であれば、なにかしらの治療法が確立されているように思えます。
しかし、アルツハイマー型認知症の効果的な治療法はいまだ見つかっていません。
なぜなら、脳の衰えに効果的な物質が明らかになっていないためです。
2008年にアルツハイマー病の原因である、悪質なタンパク質を減らすワクチンが開発されました。そのワクチンを用いることで、確かに脳内の悪質なタンパク質を減らすことに成功しました。
しかし、なぜか脳の衰えへの効果は見込めず、発症を抑えることはできなかったのです。
そのためワクチンの開発はされているものの、アルツハイマー病を根本から治すことはできません。とはいえ、症状の進行を遅らせる治療薬は存在しています。
症状の進行を遅らせる治療薬には、アリセプト、レミニール、リバスタッチ、メアリーの4種類が抗認知症薬としてあげられます。また、アルツハイマー病の周辺症状を抑える抗うつ剤なども効果的です。
参照:アルツハイマー病の治療|アルツハイマー病情報サイト
いずれも症状を一時的に抑えるというもので、根本から改善できるわけではありません。
アルツハイマー型認知症の予防策
アルツハイマー型認知症の予防策は下記2つが考えられます。
- コミュニケーションを行う
- 適度な運動
コミュニケーションを行う
まず1つ目はコミュニケーションを行うことです。
なぜなら、誰かと接することで脳への刺激につながるためです。
人間は会話をするときに脳みそをよく使い、大いに刺激させます。何を話せばいいのか、相手は何を思っているのかなど、会話するの中で考えることがたくさんあります。
そして、脳への刺激はアルツハイマー型認知症に大きな効果を生むことが実証されています。
参照:アルツハイマー病の正しい理解|コミュニケーション障害学
コミュニケーションを通して脳に刺激を与えることで、アルツハイマー病の予防ができるでしょう。
適度な運動を行う
適度な運動を行うことは、アルツハイマー型認知症に効果的だといえます。
運動と脳みそには深い関係があるためです。ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センターが、運動による脳の活性化について明記しています。
「運動によって脳の認知機能が高まることが最近の研究で分かってきました。つまり、持久力と認知機能には相関関係があるということです」
適度な運動をすると脳みそに刺激を与え、記憶力が上がるともいわれています。
そのため、適度な運動はアルツハイマー型認知症の予防に効果的だといえるでしょう。
アルツハイマー型認知症の診断方法|一般の認知症検査と同様
アルツハイマー型認知症の診断は一般の認知症検査と同様です。
長谷川式認知症スケールやミニメンタル・ステート検査(MMSE)、神経心理学検査、CTや頭部MRIの脳検査などが考えられます。
心理学検査で一定の水準を下回るとアルツハイマーだと診断されるのです。
とはいえ、様々な検査方法はありますが、アルツハイマー型認知症の早期発見は難しいといわれています。本人は病気という自覚がなく、診断を拒否するケースが多いからです。
そんな状況でも簡易的に診断できるのは、長谷川式認知症スケールでしょう。
1974年に精神科医の長谷川先生によって開発され、現在に至るまで多くの方に利用されている検査方法です。
簡単な質問に答えるだけで結果がすぐにわかります。長谷川式認知症スケールはこちら
アルツハイマー型認知症の方への接し方|思いやりを持つ
最後にアルツハイマー型認知症の方への接し方についてお話します。
話したことがうまく伝わらない、伝えたのにすぐに忘れてしまうアルツハイマー病。症状が出る前とは性格や言動が変わってしまい、戸惑いや不安を隠せないでしょう。
しかし、相手への思いやりを持って落ち着いて接してください。
なによりアルツハイマー型認知症の本人が最も不安で仕方ありません。
何を言ってもすぐ忘れてしまうので、イライラしてしまいがちです。だけど、忘れてしまうのは脳の萎縮が起こっているので仕方がないこと。
感情的に起こってしまうと相手は混乱してしまうので、どんなときもその方に合わせて話をしてください。
しっかりと相手を承認してあげて、対等の人間として接するのが大切になります。
まとめ:アルツハイマー型認知症の診断は早めに行おう
ここまで、アルツハイマー型認知症の初期症状や予防策についてお話しました。
アルツハイマー型認知症は、高齢化による単純な物忘れとは全く異なる病気で、症状には大きく分けて中核症状と周辺症状の2種類があります。
アルツハイマーの進行を遅らせる治療薬はあるものの、根本から改善する方法はありません。
そのため、コミュニケーションをとる、適度な運動をするなどが予防策として有効になります。
アルツハイマー型認知症は早めの診断が大切です。
診断が遅れたために様々なトラブルに繋がってしまう。そうならないためにも、早めの診断を行いましょう。