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2026.08.21

身寄りのない高齢者は入院・施設入所をどうする?2026年の制度改正で変わる支援

「入院には保証人が必要と言われたけれど、頼める家族がいない」「親族と疎遠で、将来介護施設に入れるのか不安」と悩む高齢者は少なくありません。

結論から言うと、身寄りのない高齢者でも入院や介護施設入所は可能です

少なくとも入院治療が必要な人について、身元保証人がいないことだけを理由に医療機関が入院を拒否することは認められていません。また、特別養護老人ホームなどの介護保険施設でも、身元保証人がいないことだけを理由にサービス提供を拒むことは適切ではないとされています。

ただし、実際の現場では「緊急時の連絡は誰にするのか」「入院費や施設利用料はどう払うのか」「退院後の生活を誰が支えるのか」といった問題があります。

こうした課題を背景に、2026年には社会福祉法等が改正され、頼れる身寄りがいない高齢者への支援を公的な福祉の仕組みの中で強化する方向が示されました。

この記事では、身寄りのない高齢者が入院・施設入所するときに何が問題なのか、2026年の制度改正で何が変わるのかをわかりやすく整理します。

「身寄りのない高齢者」は親族がいない人だけではない

「身寄りがない」というと、配偶者や子ども、兄弟姉妹などの親族がまったくいない人を想像しがちです。

しかし、実際の支援ではもっと広く捉える必要があります。

親族がいても遠方に住んでいる、長年交流がない、家族自身が高齢や病気で支援できない、連絡を取れても身元保証までは頼めないといったケースもあるからです。

厚生労働省のガイドラインでも、家族や親類に連絡がつかない人や、家族から支援を受けられない人を支援対象になり得るケースとして挙げています。

つまり重要なのは、戸籍上の家族の有無ではなく、”入院や施設入所の場面で「実際に頼れる人がいるか」” です。

身寄りのない高齢者でも入院はできる

身元保証人がいないことだけを理由に入院拒否はできない

身寄りのない高齢者が最も心配しやすいのが「保証人がいないと病院に入れないのではないか」という点です。

厚生労働省は2018年の通知で、入院による治療が必要であるにもかかわらず。身元保証人等がいないことだけを理由に意志が入院を拒否することは、医師法第19条第1項に抵触すると示しています。

そのため「家族がいない=入院できない」というわけではありません。

一方で、病院が保証人や緊急連絡先の記入を求めること自体は珍しくありません。

ここで大切なのは「保証人」という一つの言葉だけで考えないことです。

病院が求めているのは「保証人」ではなく複数の役割

病院が身元保証人などに期待する役割には、緊急時の連絡先、入院費の支払い、入院中に必要な物品の準備、退院支援、死亡時の遺体・遺品の引き取りなどがあります。

つまり、本当の問題は”「保証人という名前の人を一人用意できるか」ではなく、それぞれの役割を誰が担うか” ということです。

例えば、入院費は本人の口座から支払い、日用品は支援者に購入を依頼し、退院後の生活については病院の医療ソーシャルワーカーとケアマネジャーが調整するなど、役割を分けて対応できる場合があります。

一人の家族にすべてを任せるのではなく、必要な支援を一つずつ分け、それぞれを担える人や制度につなぐという考え方が重要になります。

これは、身寄りのない高齢者の入院を考えるうえで、単に「保証人を探す」よりも大切なポイントです。

医療行為への同意は身元保証とは別に考える

手術などの医療行為についても注意が必要です。

身元保守尾人や成年後見人がいれば、本人に代わってなんでも医療同意ができるわけではありません。

厚生労働省は、医療行為への同意は本人の身体や生命に深く関わるものであり、第三者に一般的な同意権限があるわけではないという考え方を示しています。成年後見人等にも、一般的な「医療同意権」があるわけではありません。

本人に判断能力がある場合は、本人の意思確認が基本です。

意思決定が難しい場合には、医療・介護関係者や成年後見人等が連携し、本人のこれまでの移行なども踏まえながら支援していくことになります。

身寄りがなくても介護施設入所できる

介護施設についても「身元保証人がいなければ絶対に入れない」とは限りません

厚生労働省は、特別養護老人ホームなどの介護保険施設について、法令上、身元保証人等を求める規定はなく、身元保証人がいないことはサービス提供を拒否する正当な理由には当たらないとしています。

ただ、実務では施設側にも不安があります。

利用料が滞った場合はどうするのか、急変時には誰へ連絡するのか、退所時の手続きや亡くなった後の対応をどうするのか、といった問題です。

そのため、入所相談の際には「保証人がいません」と伝えるだけで終わらせず、施設が何のために保証人を求めているのかを確認することがポイントになります。

「緊急連絡先が必要なのか」「支払いの保証が必要なのか」「死亡後の対応まで求めているのか」がわかれば、それぞれ別の方法で対応できる可能性があります。

なお、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などは、契約内容や入居条件が施設ごとに異なります。希望する施設がある場合は、身元保証人がいない場合にどのような対応が可能なのか、早めに確認しておくとよいでしょう。

2026年の制度改正で身寄りのない高齢者への支援が変わる

入院・施設入所手続きや死後事務が新たな福祉事業へ

2026年6月、社会福祉法等の一部を改正する法律が成立し、6月25日に公布されました。

改正の大きなポイントの一つが「頼れる身寄りがいない高齢者等」への支援の充実です。

新しい仕組みでは、日常生活の支援に加えて下記などを支援する事業が、第二種社会福祉事業として位置付けられます。

  • 入退院・入退所の手続き
  • 緊急連絡先の提供
  • 費用の支払代行
  • 葬儀や納骨
  • 家財処分の契約手続き
  • 行政への届出

一定の資力要件に該当する人については、無料または低額で利用できる仕組みも想定されています。

これまで家族や親族が担うことを前提にしがちだった部分を「頼れる家族がいなくても地域で暮らし続けられる仕組み」へ変えていこうとしている点が今回の改正の特徴です。

2026年にすべての支援がはじまるわけではない

ここは誤解しやすいところです。

法律は2026年に成立・公布されましたが、新しい支援がすべて2026年から利用できるわけではありません。

厚生労働省の資料では、日常生活支援や入院・入所手続支援、死後事務支援などを第二種社会福祉事業として位置付ける部分は、法律の公布後2年以内に政令で定める日から施行くされる予定です。

一方、地域包括支援センターなど既存の支援体制について、頼れる身寄りのない高齢者等からの相談対応を明確に位置付ける見直しは、2027年4月1日施行とされています。

つまり「2026年の制度改正」は完成した支援が一斉に始まるという意味ではなく、身寄りのない高齢者を地域で支える体制をつくり直すスタート地点と考えるとわかりやすいでしょう。

身寄りがない場合はどこへ相談すればいい?

実際に入院や施設入所が必要になったとき、本人だけですべての手続きを抱える必要はありません。

入院中であれば、まず病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援部門へ相談してみましょう。

介護や今後の暮らしについて困っている場合は、市区町村や地域包括支援センターも身近な相談先です。

判断能力が低下して財産管理や契約が難しくなっている場合には、成年後見人制度が選択肢になることもあります。また、判断能力が一定程度残っている人には、社会福祉協議会などが行う日常生活自立支援事業を利用できるケースもあります。

さらに、民間の「高齢者等就寝サポート事業」を利用する方法もあります。

ただし、サービス内容や料金は事業者によって異なります。消費者庁も、身元保証、日常生活支援、死後事務などについて、具体的なサービス内容や費用を確認したうえで契約するよう注意を促しています。

大切なのは、入院や施設入所が目前に迫ってから「保証人がいない」と困るのではなく、元気なうちから

緊急時の連絡、金銭管理、入院時の手続き、退院後の生活、亡くなった後の手続き

をそれぞれ誰に頼めるのか整理しておくことです。

まとめ|「保証人がいない」ではなく必要な支援を一つずつ考えよう

身寄りのない高齢者でも、身元保証人がいないという理由だけで入院や施設入所ができなくなるわけではありません

一方で、家族が担ってきた緊急連絡、支払い、退院・退所の調整、死後の手続きなどを誰が担うのかという課題は残ります。

2026年の社会福祉法等の改正では、こうした問題を本人や家族だけに任せず、地域の福祉支援として支えていく方向がより明確になりました。

「身寄りがないから入院できない」「保証人がいないから施設には入れない」と最初から諦めるのではなく、まず何の支援が不足しているのかを一つずつ整理することが大切です

そのうえで、病院、市区町村、地域包括支援センター、社会福祉協議会などにつなげていけば、利用できる制度や支援策が見つかる可能性があります。

身寄りのない高齢者が増えていくなか、これからは「家族がいること」を前提にするのではなく、家族がいなくても必要な医療や介護につながれる仕組みをどうつくるかが、より重要になっていくでしょう。