これから介護を始める方の中には、「正しい食事介助はどうやればいいんだろう?」と、疑問や不安を感じている方もいると思います。
なにもかもが初めてなので、食事前の準備は何をやるべきか、気をつけるべきことは何なのかなど、わからないことが非常に多いでしょう。
そもそも食事介助とは、1人で食事を上手く行えない方のお手伝いをすることです。
毎日行う事だからこそ、食事介助はとても深く、気をつけるべきことがたくさんあります。
今回は、食事介助を行う前の準備、安全なやり方と正しい手順についてご紹介します。
もくじ
食事介助とは|1人で食事を行えない方のお手伝い
食事介助とは、1人で食事を上手く行えない方のお手伝いをすることです。
ご高齢の方は身体機能の低下だけでなく、認知症による思考能力の低下から1人で食事を摂るのが難しくなります。
特に物を飲み込む嚥下能力については、歳を取るにつれて徐々に悪化していくのです。
このように1人で食事を摂るのが難しい方に対して、安全で楽しい食事のお手伝いをするのが介護する側のつとめといえます。
食事介助で注意していただきたのが介護はあくまで、本人の能力を維持する「自立支援」を目的にしています。そのためできることは本人に極力行ってもらい、身体機能の向上へとつなげましょう。
事前に知っておくべきご高齢者の症状
私達は普段何気なく食事を摂っていますが、ご高齢者は身体能力の低下から食事をしづらくなっています。
例えば、今まで通りのスピードで食べられない、飲み込むのに時間を要するなど、年齢とともに様々な症状が現れてくるのです。
それらご高齢者の症状を理解せず食事介助を行ってしまうと、取り返しのつかない大事故が起こってしまいます。
そうならないためにも下記のご高齢者の症状一覧を参考にしてください。
■ご高齢者の症状一覧
- 顎が衰えるので噛む力が弱くなる
- 唾液が出づらくなるため喉が渇きやすくなる
- 飲み込む力「嚥下(えんげ)能力」が弱くなる
- 味覚を感じ取りづらくなるため濃い味を求める
- 消化器官が衰えるため食欲がわきづらくなる
ご高齢者の嚥下障害についてはこちらを参考ください。
➡『誤嚥性肺炎のリスクになる嚥下障害(えんげしょうがい)とは?』
食事介助を行う前に必要な3つの準備
嚥下体操を行う
食事介助を行う前に、ご高齢者と一緒に嚥下体操を行う必要があります。
嚥下体操を行うことにより食事をスムーズに進められるためです。
嚥下体操とは、舌を動かしたり発音の練習をしたりする口腔体操のことです。
口を動かすことで唾液の分泌量を向上させ、嚥下がスムーズになります。同時に頬や喉の筋肉を活性化させられるため、食べこぼし防止にもつながります。
そのため食事前は嚥下体操を行い、食事を円滑に進めましょう。
正しい姿勢をとる
正しい姿勢をとって食事介助を行いましょう。
なぜなら、誤嚥(ごえん)によるリスクを大幅に減らせるからです。
誤嚥とは食べ物が何らかの理由で誤って気管に入ってしまうことです。
正しい姿勢は人によって異なりますが、基本的には上体をできるかぎり起こした90度が良いとされます。
上体を起こしたまま食事を摂ることで、重力の作用を受けられて嚥下がスムーズになります。結果として食道へ運びやすくなるのです。
誤嚥の主な原因は嚥下能力の低下です。その誤嚥を防ぐためにも、正しい姿勢をとって食事介助を行ってください。
口腔内の洗浄
口腔内の洗浄は食後で良いと考えていませんか?
しかし、口腔内の洗浄は食事前にも行うべきです。
なぜ食事前にも口腔洗浄を行うのでしょうか?それは、感染病のリスクを防ぐことができるからです。
ご高齢者になると唾液の分泌量が極端に減ってしまい、口内が乾きやすくなります。口内が乾いている状態だと雑菌が繁殖しやすくなるのです。
そして口内に雑菌が多量に付いているまま食事してしまうと、雑菌を体内へ持ち込んでしまい感染症のリスクとなるのです。
雑菌の繁殖を防ぎ、感染症の予防をするためにも食事前に口腔内を清潔にしましょう。
正しい食事介助のやり方と手順|食事前と食事中
食事前
食事前は食事をスムーズに進めるための準備をしましょう。この準備を怠ると事故に繋がる可能性が高まるので注意してください。
(1)口腔内をブラシ等でキレイに洗浄します。
(2)嚥下体操を一緒に行い、これから食事を摂るという意識付けをしましょう。
(3)正しい食事の姿勢をとってもらい、エプロンをかけます。
(4)その人に合った食事を用意し、隣の椅子に座って介助の準備をしましょう。
食事中
食事介助はその人に合った適切なスピードで行います。常に様子を観察し、しっかり飲み込みの確認をして食事介助を進めましょう。
(1)食事を摂る前に水分介助をしましょう。喉が潤って飲み込みがスムーズになります。
(2)食事は水分の多いものから順に行い、嚥下の難しいものを後にもっていくのが基本です。
(3)主食、副菜、水分を交互に介助し、食事の楽しさを共有します。食べ物だけでは喉につまらせやすいので、こまめな水分介助を忘れないでください。
(4)食事が終わったら食事量を確認します。全部食べきれた嬉しさを共有して、食事は楽しい行為だと覚えてもらいましょう。
(5)食事後に再度口腔内の洗浄を行い、虫歯の予防につとめます。また、食べてすぐ横になると食べ物が逆流する恐れがあるので、数十分は食休みを行ってください。
食事介助を行う際の注意点!
食事のペースを急かさない
食事介助を行う際は、食事のペースを急かさないでください。
飲み込みを焦らせてしまうと誤嚥の危険性が高まるからです。
介助を早く終わらせたいがために食事のペースを急かしてしまうと、本人も焦ってしまい無理やり飲み込みます。
ご高齢になればなるほど嚥下能力が低下してしまい、食べ物を上手く飲み込めなくなります。ただでさえ飲み込みが悪い状態なのに、焦らして無理やり飲み込ませると喉をつまらせるなど、誤嚥のもとです。
食事を急かすことで様々なリスクとなるので、本人に合わせた食事ペースで介助を行いましょう。
食事介助をすすめる際は嚥下したのを必ず確認してから行ってください。
立って食事介助を行わない
立って食事介助を行わないよう注意してください。
なぜなら顎が上に向いてしまうからです。
立った状態で食事介助を行われると、どうしても視線が上に行きます。
視線が上に行くと必然的に顎と首が上を向き、食べ物が喉を通りづらくなるのです。
上手く飲み込めず喉に詰まる恐れがあるため、立った状態での食事介助は控えましょう。
またもう一つの理由として、立った状態で介助されると威圧的に感じてしまいます。食事に対して苦手意識が芽生える原因となるので注意しましょう。
一口の量に気をつける
食事介助をするとき、一口の量に必ず気をつけてください。
ご高齢者は嚥下能力の低下から、一度に沢山の量を食べることはできません。
一口を多量にしてしまうとむせや吐き出しの原因となり、事故のリスクが高まります。
食事ペースが早いからといって一口を多量にするのはやめるべきです。
本人の食べやすい量を見つけ出し、一口は均一で進めてください。そのためにも食事のペースや飲み込むタイミングを日々観察し、意識し続けるのが大切になります。
まとめ|食事介助の安全なやり方とは?食事前の3つの準備と正しい手順
ここまで、食事介助の事前準備、正しいやり方と注意点についてご紹介しました。
食事介助とは、1人で食事を上手く行えない方のお手伝いをすることです。
ご高齢者になると嚥下能力が低下し、食べ物を上手く飲み込めなくなります。
また、噛む力や唾液が出づらくなるので誤嚥の事故に繋がりやすいのです。
安全に食事を摂るためにも、嚥下体操や口腔内の洗浄など、事前準備をしなければなりません。
食事介助は人によって細かいやり方が異なるので、その人に合った正しい食事介助を行いましょう。
食事を摂るというのは何歳になっても楽しい行為ですが、ご高齢者の誤嚥事故は後を絶ちません。
ぜひ今回紹介したことを参考にして、安全で楽しい食事介助を行ってください。
知識だけでは解決できない場合、介護保険制度が適用できる訪問介護サービスを利用するのも1つの手段です。
1人で悩まずに楽しく正しい介護を行っていきましょう。
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