2025年6月30日から7月6日までのわずか一週間の間で、熱中症による救急搬送人員数は10,000人を突破。
もはや熱中症は他人事ではなく、常に私たちの生活と隣り合わせになっています。
そんな近年の猛暑による熱中症の重篤化を防止するために労働安全衛生規則が改正され、2025年6月から職場における熱中症対策が義務化されました。
これにより、職員と利用者の安全と健康を守るために介護施設では具体的な対策を講じる必要があります。
この記事では介護現場における熱中症のリスクから具体的な対策、さらには法的責任の詳細や緊急対策マニュアルなどをご紹介します。
この記事を通して少しでも熱中症のリスクを軽減できるように努めましょう。
もくじ
熱中症対策義務化の背景-なぜ「今」義務化なのか

近年急激に新臆する地球温暖化によって気温と湿度が上昇し、熱中症による死傷者が増加しています。
厚生労働省の報告では、2023年には日本国内で1,106件の労災認定熱中症が発生し、31名が死亡しました。
中でも高齢者は体温調整機能が低下しており、熱中症に非常に脆弱な傾向にあります。
総務省によると、2024年の5月~9月の熱中症による救急搬送のうち、なんと全体の50%を高齢者が占める結果となっています。
従来、事業者にはあくまで「努力義務」として熱中症対策が求められてきましたが、具体性や罰則が不十分だったため、安全対策が徹底されていない現実がありました。
そこで2025年6月から労働安全衛生規則が改定され、熱中症対策が「罰則付き義務」として強化されたのです。
義務化された熱中症対策の制度内容
2025年6月に義務化された熱中症対策には作業条件が設けられています。
対象となるのは下記条件を満たす作業耐環境です。
これには屋外だけでなく、入浴介助や洗濯、移動支援などの温度が高い室内環境下のケア業務も含まれます。
- WBGT(暑さ指数)が28度以上または気温31度以上
- 連続で1時間以上、または1日4時間を超える作業見込み
上記の作業耐環境の条件を満たす介護現場の場合、これから紹介する3つの義務内容が適用となります。
義務内容①:体制整備(報告フロー)
作業環境が条件に該当する場合は職員や利用者に異変があった場合に備え、以下の体制を構築して従業員へ周知が義務化されています。
・熱中症自覚症状や発症事例を通報する「連絡先・担当者」を事業所ごとに定める
・その内容を職員に明確に周知する(掲示・研修等で周知)
義務内容②:悪化防止措置(手順整備)
職員や利用者に熱中症兆候が満たれた場合に備え、以下の内容を具体的にマニュアル化して職員に浸透させることが必要です。
・作業中断および休憩・離脱の判断
・冷却措置(冷風・水分補給・体冷却など)
・必要に応じて医師の診察・処置へつなぐ体制
・緊急搬送の連絡網・連絡先・搬送先施設を明示
義務内容③:周知・教育
作業者全員に対して以下を定期的に教育し、理解させる必要があります。
・熱中症の症状と重症度分析
・水分・塩分補給のタイミングと方法
・熱中症予防グッズの使用方法
・異常時の報告・応急措置手順
これらの義務内容に背いたり規則を怠って対策をしなかったりした場合、法人や代表者に対して6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
また、事故発生時は厚労省や労基署による行政処分が下される可能性もあるため、企業責任はとても厳格です。
一人一人が当事者意識を持ち、常に心掛けながら作業に取り組む姿勢が必要です。
現場別|熱中症対策の実践的な取り組み

一言に介護現場と言っても特養やデイ、訪問などその形態はさまざま。
それぞれのサービスによって熱中症対策への取り組みは異なります。
ここでは特養、有料、老健、グループホーム、小規模多機能、デイサービス、サ高住などの「施設系サービス」と
「訪問看護・訪問介護」それぞれで取り組むべき熱中症対策の内容をご紹介します。
A. 施設系サービス
《環境管理の徹底》
・事業所内にWBGT計を設置し、定期的な測定を実施
・気温や湿度を掲示し、一定の数値を超過した際にはエアコン・扇風機・換気を強化
・浴室・食堂・廊下など快適温度ゾーンを明示して職員利用を促す
《報告・緊急連絡体制の整備》
・異変発見者の連絡フロー(職員→担当責任者など)を図示化
・救急搬送も含む連絡先リストの掲示(家族・医療機関・119など)
《教育と啓蒙》
・人事・現場研修を通じて熱中症症状や対応フローを周知
・eラーニング・動画教材を利用した定期教育も有効
《予防グッズ・休憩体制》
・経口補水液・冷却シート・塩分補給タブレットなどを常備・自由に利用できるようにする
・定期的な水分補給タイム・冷房休憩の実施
B. 訪問介護・訪問看護
《事業所内での準備》
・連絡フロー・応急手順のマニュアル化・全職員に共有
・訪問用車両のエアコン整備・温度管理チェックも定期実施
《訪問中の環境配慮》
・利用者宅の室温確認、必要時には風通しや窓開放を実施依頼
・外出・移動時の防止着用、水分携帯などの自己防衛策
《利用者・家族への啓発》
生活指導において塩分補給、水分補給、エアコン使用を推奨
・室温チェック用温湿度計の貸出などで協力体制を構築
介護現場においては職員ももちろんのこと、利用者の熱中症対策にも努める必要があります。
双方が無理なく日々を過ごせるよう、日頃から熱中症対策への意識を持つことが重要です。
熱中症対策における補助金・助成金活用
今回義務化された熱中症対策において、政府が設置しているものの中で活用できる補助金や助成金があります。
これらは一般企業だけでなく介護施設でも利用できるものなので、積極的に利用していきましょう。
- エイジフレンドリー補助金(厚労省):WBGT計や空調服、休憩所整備に使用可能(最大100万円)
- 業務改善助成金(厚労省):冷房・送風機などの設備導入に使用可能(最大600万円)
- 働き方改革推進支援助成金:空調・換気導入に使用可能(最大200万円)
ただし、これらの補助金・助成金には申請期限があるため、2025年夏の早期申請をおすすめします。
酷暑の夏を戦い抜くために早めの熱中症対策を
これからの猛暑に向けて職員と利用者の安全を守るため、義務化に基づく対策は「法律遵守」だけでなく、組織としての責任と信頼構築にも直結します。
本記事を踏まえてすぐに実行に移せるものから早速取り組みを始め、命を守る現場づくりを一層強化していきましょう。