ご家族の介護に関わるようになると「ADL」という言葉をよく耳にしませんか?
このADLとは「日常生活動作」のことを指し、身体機能の維持や認知症予防で非常に重要となります。
ADLを知らないまま介護すると、思わぬ結果を招いてしまうリスクがあるのです。
早めに対策するためにもこの記事では、ADLの評価基準とADLを低下させないための予防策についてご紹介いたします。
もくじ
ADL(日常生活動作)とは|生活を送る上でのあらゆる動作
はじめにADLとはなにかを説明します。
ADLとは「Activities of Daily Living」の略で「日常生活動作」のことです。
このADLは身体機能の維持と認知症予防において、非常に重要となります。
ADLの詳しくは日常生活を送る上でのあらゆる動作のことで、具体的には下記のような行動です。
■ADLの具体的な動作
- お腹が減って食事を摂る
- のどが渇いて水を飲む
- お腹が痛くなりトイレへ向かう
- 寝る前には歯を磨く
このような、日常生活を過ごすために必要不可欠の動作、それをADLと呼ぶのです。
IADL(手段的日常生活動作)との違い
ADLと似た言葉で「IADL」があります。
このIADLは「Instrumental Activities of Daily Living」の略で「手段的日常生活動作」のことを指します。
ADLを細分化し、より具体的な動作をあらわしたのがIADLなのです。
ADLは食事や排泄、入浴などの基本動作に対して、IADLでは食材の準備や料理を行う、レシピを考える、盛り付ける、片付けるなど、食事をするための具体的な手段を指します。
このようにADLより細分化された、頭を使う高度な動作をIADLと呼ぶのです。
ADLの評価基準について|FIM(機能的自立度評価法)
ADLの評価は一般の介護士や職員で勝手に決められません。世界的な評価基準が備わっているのです。
この評価基準はADLだけでなく、IADLの基準や手段がいくつも存在しています。
ここではADLの評価基準「FIM」を紹介します。
FIMとは「Functional Independence Measure」の略で、日本語では「機能的自立度評価法」になります。
1983年アメリカ合同リハビリ医学界のGrangerらによって設けられました。
評価基準FIMは食事や移乗からなる「運動ADL」13項目と、記憶や意思疎通による「認知ADL」5項目、合計18項目で構成されています。
各項目それぞれが1〜7点の7段階で評価され、点数が低いほど介助を必要とします。
具体的な内容は下記のとおりです。
■運動項目
- 食事
- 整容
- 正式
- 更衣(上半身)
- 更衣(下半身)
- トイレ動作
- 排尿コントロール
- 排便コントロール
- ベッド・椅子・車椅子への移乗
- トイレ移乗
- 浴槽移乗
- 歩行状態
- 階段昇降
■認知項目
- 理解
- 表出
- 社会交流
- 問題解決
- 記憶
上記の項目ごとに自立度と介助量を測定し、ADLの総合評価がされるのです。
参考:日常生活動作(ADL)の指標|厚生労働省
ADL低下による日常生活への影響
DLが低下すると日常生活に様々な影響を及ぼします。
今までやっていた洗濯や掃除ができなくなったり、1人で食事を摂れなくなったりと、あらゆる悪影響を招くのです。
また日常生活だけでなく活動性を低下させるため、外出を控えるようになります。他者との交流を避けることもあるでしょう。
外部から刺激を受けないと精神・身体の両方が衰え、さらなるADLの低下につながります。
この悪循環を起こさないためにも、ADL低下の早期発見と早めの予防が大切になるのです。
ADLを低下させない3つの予防策!
ADL低下による影響は把握できたかと思います。それではADL低下の予防策を見ていきましょう。
予防策をしっかり理解することで、ADLの維持につながるはずです。
- 本人の力を引き出す
- 適度な運動を行う
- 他者とコミュニケーションを取る
本人の力を引き出す
本人がやりづらそうにしていると、なにかと手伝ってしまいがちです。
しかし、ADLを低下させないためにはできるだけ本人の力を引き出しましょう。
本人の力を引き出せれば、脳の神経細胞を活性化させられるためです。
人間は自発的な行動をするとその過程において、身体と頭の両方を使っています。
その活用を通じて脳へ刺激を与えられ、脳の神経細胞の活性化へと繋がるのです。
脳とADLには深い関係があるので、本人の力を引き出すことはADL低下の予防となるのです。
適度な運動を行う
適度な運動を行うことでADL低下を予防できるでしょう。
なぜなら、運動には筋力や身体機能を維持する効果があるためです。
身体を適度に動かすと筋肉に刺激を与えることができます。
その刺激を受けた筋肉は活動的になり、身体機能の向上に期待できます。
また、身体を動かす際には脳と身体で信号の送受信を行っているので、認知の衰えも抑えらるでしょう。
適度な運動といわずとも、「歩く」だけでも非常に効果的です。
歩く動作は簡単に見えますが、実は複数の筋肉を使っています。足の筋肉だけでなく、腰や背中、腕など全身を使って歩いているのです。
そのため適度な運動、もしくは歩くだけでもADL低下を予防できます。
他者とコミュニケーションを取る
他者とコミュニケーションを取ることは、ADL低下の予防になります。
なぜコミュニケーションを取るだけで予防できるのでしょうか?
それは、誰かと話すときには大量の思考を行っているからです。
例えば初めて会った人と話す場合、「自分のことをどう思っているのか」「何から話せばいいのだろう」と、たくさんの考えを巡らせています。
それだけではなく、相手から受け取った言葉にも脳に刺激を与える作用があるのです。
他者と会話をすることにより脳機能の衰えを抑えられ、ADL低下を防げるでしょう。
ADLを維持するためのQOL(生活の質)
最後に、ADLを維持するためのQOLについてお話します。
ADLを維持するためにはQOLが必要になります。
QOLとは「quality of life」の略で、人生の質や社会的に見た「生活の質」のことです。
生活の質を保つのは、ご高齢者にとって簡単なことではありません。身体機能は衰え、満足の生活を送るのが難しくなるでしょう。
しかし、それでも最低限のQOL(生活の質)を保たなければいけません。
最低限のQOLがないとADLをさらに低下させてしまうためです。
例えば、誰とも会話をしない生活が続けば脳機能は低下します。
また家事をまったくしない生活の場合、身体機能が大幅に衰えるでしょう。
ただでさえ衰える身体はQOLを落とすことで、さらなる低下を招いてしまうのです。
ADLを維持するためにも、QOLをできるだけ向上させなければいけません。
とはいえ自分ひとりではどうにもならない場合もあるでしょう。
そんなときには、介護保険制度が適用の「介護サービス」を利用してみてください。
訪問介護サービスでは住み慣れた自宅で介護を手伝ってもらえます。
また、日帰りで通えるデイサービスは介護の他に、身体機能向上のため様々な訓練を行えるのです。
介護サービスを有効活用することでQOLを向上させ、ADLが維持できるよう取り組んでみてください。
まとめ|大切なのは徹底した予防とQOLの向上
今回は、ADLの評価基準とADLを低下させないための予防策についてご紹介いたしました。
ADLとは「Activities of Daily Living」の略で「日常生活動作」のことです。
似た言葉「手段的日常生活動作」のIADLでは、ADLよりも具体的な手段を指します。
「運動ADL」13項目と「認知ADL」5項目、合計18項目で構成されるFIMを活用すれば、ADLの評価を計測できるのです。
ADLを低下させないためには早期発見と徹底した予防が大切になり、さらにはQOLと呼ばれる「生活の質」も重要なため、今の生活とこれからの生活を見直してみてはいかがでしょう。
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