介助には食事介助や排泄介助、入浴介助など様々ありますが、それぞれ方法や注意点が異なります。
そのため、適切な介助方法を知らずに行えば、大惨事を招いてしまう可能性もあります。
この記事では、各種介助の方法、知っておくべきポイントについてご紹介します。
もくじ
食事介助の方法|手順と注意点
食事介助とは、1人で食事を行えない人のお手伝いをすることです。
ご高齢者は年齢とともに食べ物を飲み込む嚥下機能が低下します。
また認知機能の低下により、1人で食事を行うのが徐々に難しくなるのです。
そのような人が楽しく安全に食事を行えるよう、適切な食事介助をしなければなりません。
■ご高齢者の症状一覧
- 顎が衰えるので噛む力が弱くなる
- 唾液が出づらくなるため喉が渇きやすくなる
- 飲み込む力「嚥下(えんげ)能力」が弱くなる
- 味覚を感じ取りづらくなるため濃い味を求める
- 消化器官が衰えるため食欲がわきづらくなる
ちなみに食事形態はその人の嚥下能力に合わせて変えていきます。
食事形態が適したものであればスムーズな食事を行え、嚥下機能の回復も見込めます。
食事形態に関してはこちらを参考ください。
→『最適な食事形態の選び方』
食事介助の仕方
食事介助をスムーズに進めるためには準備が必要です。
安全な食事介助をするためにも、準備をしっかり行いましょう。
■食事前の準備
(1)口腔内をブラシでキレイにする
(2)嚥下体操を行って食事の意識付けを行う
(3)正しい食事の姿勢をとってもらいエプロンをかける
(4)食事を用意して隣の椅子に座る
食事介助はその人に合った適切なスピードで行います。
食べ物を口に詰め込みすぎると窒息の原因になるので、飲み込みの確認をしつつ食事介助を進めましょう。
■食事中の介助
(1)食事前に水分介助を行う
(2)食事は水分の多いものから順に行う
(3)主食、副菜、水分を交互に介助し、食事の楽しさを共有する
(4)食事が終わったら食事量を確認
(5)食事後に再度口腔内の洗浄を行う
食べてすぐ横になると食べ物が逆流する恐れがあるので、数十分は食休みを行ってください。
食事介助の注意点
食事介助で注意すべきは、食事のペースを急かさないことです。
焦らせると窒息や誤嚥の原因になりますので落ち着いたペースで行いましょう。
また、ご高齢者と目線を合わせるために座った状態で介助してください。
立って食事介助をすると目線が上に向いてしまい、飲み込みづらくなるため注意しましょう。
食事介助についての詳細はこちらを参考ください。
→『食事介助のやり方を詳しく解説』
入浴介助の方法|手順と注意点
入浴介助は、自力で入浴するのが困難な人に対して一部お手伝いをします。
本人の力を引き出す自立支援をなるべく意識しましょう。
入浴は心身ともにリフレッシュできるとても気持ちの良い行為ですが、あらゆるリスクがあるので注意してください。
■介助する際に必要な物
- バスタオル
- 着替え
- 新しいおむつ
- ボディソープ
- スポンジ
- シャワーチェア
- 転倒防止マット
- 保湿剤や塗布薬
- 爪切り
■介護する側が身につける物
- エプロン
- 滑りにくい靴
- 手袋
- マスク
入浴介助の仕方
安全な入浴を行うために準備すべきことがたくさんあります。
■入浴前の準備
(1)バイタルチェックと浴室の環境チェックを行う
(2)浴槽にお湯をためて必要な物を用意する
(3)排泄介助やトイレを済ませて脱衣所へ案内する
入浴の準備ができたら入浴介助を行います。
入浴はご高齢者の体力を奪うため、細心の注意を払いましょう。
■入浴中の介助
(1)ご高齢者の肌が触れる椅子や浴槽まわりをお湯で温める
(2)足元に気をつけながら専用の椅子に座っていただく
(3)シャワーからお湯を出して声掛けしてから身体を温める
(4)足からお湯を当てていき、頭、顔、身体の順番で洗っていく
(5)全身を洗い終えたら流し残しがないかチェックする
(6)浴槽に入っていただく
(7)浴槽に浸かる時間はおおよそ5分程度
(8)浴槽、浴室から出るときは非常に滑りやすいので足元に注意する
■入浴後の介助
(1)濡れている箇所をしっかりと拭き取る
(2)ゆっくりと椅子に座ってもらい、保湿剤や塗布薬を塗って着替える
(3)髪の毛をドライヤーで乾かす
(4)水分補給を行って再度バイタルチェックを行う
入浴介助の注意点
入浴介助で注意すべきはヒートショックです。
ヒートショックとは、急激な温度差で発生するショック症状のことです。
特に冬場は浴室と居間の温度差が大きいため、注意してください。
このヒートショックの対策は、脱衣所に小型ストーブを設置するなどがあります。
また浴室は非常にすべりやすいため、転倒によるケガにも十分気をつけてください。
入浴介助の詳しい注意点についてはこちらをご参考ください。
→「入浴介助についての手順と注意点を徹底解説」
排泄介助の方法|手順と注意点
排泄介助とは、トイレで排泄するのが難しい人の手伝いやおむつ交換をすることです。
トイレまでの誘導やトイレ介助、ベッド上のおむつ交換など様々な排泄介助があります。
排泄行為は非常にデリケートなので、自尊心を傷つけないよう行いましょう。
■排泄介助に必要なもの
- 使い捨て手袋
- トイレットペーパー
- 陰部洗浄ボトル
- 陰部清拭用ペーパー
- 包み紙(新聞紙など)
- 包む袋(レジ袋など)
- おむつやパッド
排泄介助の仕方
備え付けのトイレへ移動する際は体力を使うため、転倒や打撲などにしっかり気をつけましょう。
■トイレでの排泄介助
(1)排泄意思を伺いトイレまで誘導する
(2)トイレに到着したら必要に応じて脱衣介助を行う
(3)便座にいきおいよく座ってしまうとケガの原因になるため、安全に座れるよう手伝う
(4)排泄中は非常に羞恥心を感じやすいため、プライバシーに気を使いましょう
(5)排泄が終わったら陰部を素早く拭き取る
(6)立ち上がりや着衣の介助を行う
備え付けトイレではなくポータブルトイレで行う方法もあります。
わざわざ遠くまで行かなくても良いので、転倒などのリスクを減らせるでしょう。
■ポータブルトイレでの排泄介助
(1)ベッドからポータブルトイレに移る場合は上体をしっかり起こす
(2)ポータブルトイレの蓋を開けて脱衣介助を行い便座に腰掛けてもらう
(3)排泄行為が終わるまで近くで待機し、終わったかどうか確認する
(4)備え付けトイレ同様、陰部をペーパー等で拭き取る
(5)ベッドに移乗したあとポータブルトイレの掃除をする
排泄介助の注意点
排泄介助で気をつけるべきは、ご高齢者の尊厳を傷つけないことです。
排泄な非常にデリケートな行為なので、誰かに見られると恥ずかしいと感じてしまいます。
尊厳を傷つけないためには目線のやり場に気をつける、必ず声掛けをするなどが考えられるでしょう。
またご高齢者の水分補給も十分に行ってもらいましょう。
排泄介助の回数が増えるからと水分制限をする人もいますが、脱水症状や便秘の原因となるので必ず水分を取ってもらってください。
排泄介助についての詳細はこちらを参考ください。
→『排泄介助で知っておくべき注意点と3つの種類を徹底解説』
介助する人が知っておくべき2つのポイント
介助する人が知っておくべきポイントは以下の2つ。
- 自立支援を心がける
- 一人で抱え込まない
自立支援を心がける
各種介助に取り組む場合、自立支援を心がけてください。
自立支援とは、できるだけ本人の力のみで生活を行ってもらうことです。
介護をなんでもやってしまうと身体機能や認知機能の低下につながります。
結果として本人のためにはなりませんので、大変そうにしていても自立支援を心がけましょう。
一人で抱え込まない
介助する人が知っておくべきは、一人で抱え込まないことです。
自宅での介護は非常に大変です。
一人で介護疲れを溜め込んでしまうと「介護うつ」や「介護放棄」につながる恐れがあります。
その状態になる前に、一人で抱え込まない対処法を取りましょう。
周りの人に相談する、介護サービスを頼るなどが考えられます。
関連記事 【高齢者向けの介護サービスとは?種類や特徴を徹底解説】
腰を痛めない介護技術「ボディメカニクス」
自宅介護で腰を痛めてしまう人もいるでしょう。
そんな人は腰を痛めづらくなるボディメカニクスを活用するべきです。
ボディメカニクスとは、お互いの負担を減らす介護技術のことです。
介護する側の体を守れるだけでなく、介護される側の負担も減らせます。
■ボディメカニクスの8つの原則
- 支持基底面を広げる
- 重心を低くする
- 重心を近づける
- 大きな筋肉を使う
- 水平に移動させる
- 身体をひねらない
- 摩擦を小さくする
- テコの原理を使う
上記の基本原則に基づきボディメカニクスを実行します。
体を痛めないためにも、ボディメカニクスを活用して安全な介助を行いましょう。
ボディメカニクスについての詳細はこちらをご参考ください。
→『「ボディメカニクス」とは?基本原則と注意点を紹介』
まとめ|適切な介助方法を学んで安全に介助を行おう
この記事では、各種介助の方法、知っておくべきポイントについて紹介いたしました。
食事介助を安全に行うためには事前準備が大切です。
また、その人の嚥下能力に合わせて適切なスピードで食事介助を行いましょう。
入浴介助は心身ともにリフレッシュのできる、非常に気持ちが良い行為です。
しかしヒートショックや転倒といったリスクがともなうので、細心の注意を払って入浴介助を行ってください。
そして介助方法や注意点はそれぞれの介助ごとにまったく異なります。
知らない状態で行ってしまうと取り返しがつかなくなってしまう恐れもあるので、ぜひこの記事を参考にして理解を深めましょう。
介助方法を詳しく知りたい人は下記をご覧になってください。
■各種介助方法をご紹介しています。